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井手剛の研究紹介

井手剛が関与している(関与した)プロジェクトの紹介ページです。

現在のプロジェクト

自律型コンピューティングのプロジェクトが終了した後、IBM東京基礎研究所には、データマイニングや機械学習を主たる専門分野とするグループはあ りませんでした。私自身、専門家と言えるには程遠い状況でした。しかし2005年末頃に私は、主として製造業の分野で豊富に取得されつつあった物理センサーからのデータの解析技術の持つ技術的・ビジネス的可 能性に着目し、データ解析を専門にするチームを立ち上げました。いわば会社員としては勝負に出たわけですが、実はそれが、現在活発に活動しているIBM東京基礎研究所のデータ解析チームの始まりです。

プロジェクト提案当時は、データの活用というのは、標準的なソフトウェア工学的手法によるデータ・トレーサビリティの確保とほぼ同義でしたが、今で はSmarter Planetキャンペーンや、その具体的実装であるBusiness Analytics and Optimization (BAO) などに明らかなように、解析技術そのものがビジネスモデルを左右する破壊力を持っているという事実が認知されつつあります。

過去のプロジェクト

Automated Analysis Initiative (AAI; 2003-2005)

伝統的なデータベースソフトウェアのアーキテクチャは、 売上データのような、表形式になじむデータを暗黙の前提にしており、 物理センサーからのデータのような、 典型的には実数値時系列となるデータに対しての親和性は必ずしも高いとは言えませんでした。 このプロジェクトでは、 IBM DB2の周りにいわばラッパーとして機能する データアクセスのためのユーティリティ群を実装することで、 具体的には自動車の障害解析時に有用なソフトウェアフレームワークを提供することを目的にしました。

自律型コンピューティング同様、 私はデータ解析ないしデータマイニングの観点からこのプロジェクトに参加し、 データ解析ライブラリのいくつかを開発・実装しました。 たとえば、変化点相関の方法(上記SDM論文)はこのプロジェクトの中で研究されたものです。

自律型コンピューティング(2002-2004)

定型業務の自動化という文脈で2000年代初頭から急速に普及した社内情報システムですが、 システムが大規模になると、障害の発生を事前に予期し、 迅速に解決することがだんだん困難になってきました。 そこでIBMは、情報システムの未来像が、「自律型」の計算システムにあると考え、 社内外に大きなキャンペーンを張りました。 本プロジェクトはそれに呼応したものです。 私は、データマイニングの観点から本プロジェクトに参画しました。 情報科学分野での私のデビュー作(上記KDD論文)はこのプロジェクトの中で書かれたものです。

集光バックライト(2000-2001)

「集光バックライト」プロジェクトは、 ハイエンドノートPC用の高精細液晶ディスプレイを開発することを目標に、 IBMのディスプレイ事業部(DBU)が推進したプロジェクトでした。

ノートPC用にUXGA(1600×1200)という高精細を実現した製品は 当時市場には存在しませんでした。ノートPCではバックライトの配置や 消費電力の制約が厳しく、UXGAという高精細で、 実用に耐える輝度のディスプレイを製作することは当時の技術では困難でした。 DBUではこの困難を、プリズムシートを導光板に一体化して光透過率を極限まで高めた 特殊なバックライトで乗り越えることを検討していましたが、 TFT(thin film transistor)アレイと導光板下面の光学散乱体との間に光学的干渉が起こり、 パネルに輝度ムラが発生するという深刻な技術的課題がありました。

2000年にIBM東京基礎研究所に加わった私は、 「ディスプレイ・テクノロジー」という部門に研究員として配属されました。 2000年末からこの課題に取り組み、 同プロジェクトのリーダーであった平洋一STSM (Senior Technical Staff Member) の助言の下、このモアレ縞による輝度ムラの問題を解決する技術を開発しました。